公務員にプロジェクトマネジメントが必要な理由~その4
今回もこれまでに引き続き、公務員にプロジェクトマネジメントが必要な理由を見ていきます。
前回、プロジェクトの定義における「独自性が有ること」、「プロダクト、サービス、所産を創造すること」及び「有期的であること」という三点の要件を見てきました。今回は、その他のプロジェクトの特徴について見ていきます。
変化
プロジェクトは組織の変化を駆動する。
【PMBOK®ガイド(第6版)P6】
プロジェクトを実施することにより、通常組織は現在の状態から将来の状態に移行します。つまり、プロジェクトは特定の目標を達成するために、組織をある状態から別の状態に移行するという変化をもたらします。
例えば、施設建設プロジェクトにおいて、プロジェクトが成功して新たに施設が建設された場合、その施設を管理するために新たに施設管理担当を設置するなど、組織に変化をもたらすことが挙げられます。
一方、プロジェクトは失敗に終わる場合もありますが、このような場合であっても、組織の縮小・解散など、組織に悪い変化をもたらすことがあります。
成功するにせよ失敗するにせよ、プロジェクトは組織に何らかの変化をもたらすという特徴を持っています。
価値の実現
事業価値の創造を可能にするプロジェクト
【PMBOK®ガイド(第6版)P7】
以前のプロジェクトにおいては、納期や予算を守り、一定の品質の成果物を完成させることを主目標として取り組んできました。しかし、近年のプロジェクトにおいては、単に納期や予算を守り、一定の品質の成果物を完成させれば良いというものではなく、プロジェクトの実施によって、いかに目標の達成や課題の解決という「価値」を実現させられるかということが重要になってきています。
例えば、スポーツ施設を新たに建設するというプロジェクトの場合、単に予算や期限を守って施設を建設すれば良いというわけではなく、いかに多くの人に利用してもらうか、利用した人に満足してもらうかという、目標の達成という「価値の実現」が重要になってきます。このため、どんな施設でも良いというわけではなく、いかに内容の充実した、皆が満足する施設にするかということが重要なポイントになってきます。
つまり、プロジェクトを実施する上においては、設定した目標を達成できるか、目の前にある課題を解決することができるかなどという「価値」が実現できるかということを常に意識しながら進めていく必要があります。
組織横断
通常の業務においては、企画担当や財政担当、広報担当など、あらかじめ定められた部署ごとに業務が割り当てられており、それぞれの部署が割り当てられた業務を執行しています。これは、各部署の専門性を高めることで、生産性を高めるなどの狙いがあります。
しかし、近年発生する課題は複雑なものも多く、特定の部署だけでは対応できないこともあります。このような場合、複数の部署で対応する必要がありますが、縦割りの組織構造のままだと、部署の利益等を優先して部署間の対立を招くなど、上手く課題に対応できない場合もあります。
そこで、組織横断的に取り組むことで、縦割り組織の問題点を解決できる可能性が有るため、複雑な課題に対応するプロジェクトなどにおいては、組織横断的に取り組むことが多くあります。具体的には、プロジェクトとして共通の目標に向け一時的に各部署からメンバーを集め、プロジェクト・チームとして組織横断的に推進していきます。
このようなプロジェクト・チーム(クロスファンクショナルチーム)では、異なるスキルを持つメンバーが集まり、各部署間の利害を超えて、全体最適の視点で課題に取り組むことができるため、高度な問題解決が可能な場合も有ります。ただし、寄せ集めのメンバーであるため、マネジメントには十分な注意が必要です。
このように、プロジェクトにおいては複雑な課題に対応するため、組織横断的に取り組むことがあるという特徴が有ります。
不確実性
プロジェクトには「独自性」が有る、つまり、初めてするものです。皆さんが何かを初めてするときのことを思い出してください。誰しも初めてのことをするときは、「上手くできるかな。」とか「やり方はこれで合っているのかな。」などと考えてしまいますよね。そして、実際にやり始めると、事前に想像もしていなかったことが起きたり、場合によっては最終的に失敗してしまったりすることもあるでしょう。
これは、プロジェクトにおいても同様です。プロジェクトを進めていく中では必ずと言っても良いほど、思いもよらないことが起きたり、想定とは違う方向に進んでいったりすることがあります。このように、プロジェクトは初めてするものですので、どうなるか結果は誰にも分かりません。このように、結果の予測が困難であることを「不確実性」があると言い、プロジェクトの特徴であると言えます。
ただし、プロジェクトに不確実性があるからと言って、ただ指をくわえて待っていてはいけません。予測ができない中でも、起こりうる可能性があるものを洗い出し、対策する必要があります。その起こりうる可能性があるものをリスクと呼び、その対策をすることをリスク・マネジメントと言います。
このように、プロジェクトのその他の特徴として、「変化」、「価値の実現」、「組織横断」及び「不確実性」などがあります。次回は、では具体的にどのようなものがプロジェクトなのか、プロジェクトの具体例について見ていきたいと思いますので、引き続きご覧ください。